営農インストラクターの情報活用を強力にサポート
「横浜型営農支援・指導」を発展進化させる武器に

横浜農業協同組合 様

Introduction Data
導入年月2020年2月
利用ユーザ数35名
導入形態クラウド
導入目的担い手情報の一元化と可視化
部門間の情報共有、担い手との連携やマッチング
情報の収集、蓄積、共有、提供による業務の効率化・省力化
  1. JA横浜内部で共有できていない農家情報を一元管理したい
  2. 営農インストラクターの「出向く活動」の強化に力点を置きたい
  3. 業務の効率化・省力化により、各自の専門スキルの向上につなげたい

生産農家1,600世帯への営農支援・指導が主要な役割

営農部 小野部長

横浜市は、神奈川県はもちろん我が国においても有数の大都市圏を形成しているが、一方で県下最大の農地を有する市でもある。市内各地にある農地のほとんどは畑であり、主に、野菜や果樹、花卉、植木等を栽培している。

JA横浜は、大都市横浜の全域をエリアとする「都市農協」であり、組合員数は正組合員と准組合員をあわせて約7万人を有する。

「JA横浜エリアの農家世帯約3,600世帯のうち、耕作面積や出荷額の面から見て実態として農業経営をしっかり営んでいるのは1,600世帯。この1,600世帯に対する営農支援・指導などが営農部の主要な役割です」と営農部部長の小野英明氏は語る。

JA横浜では2020年に組織全体にわたる機構改革を進めた。

営農部、横浜農業総合対策室、販売部の3部体制を敷いており、その営農部には営農支援課と担い手課の2課を置いた。そして、担い手課には営農インストラクターと称する12名の指導員を配置(現在は14名)、1,600世帯を中心に新たな作付けや農地の有効活用、販路、助成金等申請対応、さらに金融、融資、事業承継、相続など営農に関する多方面の支援が実施できる体制を整えていった。

「日興通信・インフォファームとの付き合いは数年前、営農経済部の頃からです。当時から、生産農家の訪問計画や管理をペーパレス化したいなど、営農部門のIT化に関してさまざまな相談をしていました」(小野氏)

営農支援・指導のIT化における課題

2020年の機構改革以前、JA横浜には営農支援のIT化をめぐり、次のような課題があった。

  1. JA横浜内部における情報の共有
    各拠点に分かれて活動する営農インストラクターの担当農家に関する情報が一元管理されていないため、農家情報の共有ができていなかった。
    「営農インストラクターが訪問農家で相談を受け、個々で回答していた。いわば属人的で、組織的な対応もできず、非効率な面が多々ありました」(小野氏)
  2. 営農支援計画における進捗管理とサポート
    生産農家の支援プランを策定しても的確なPDCAが行われず、進捗管理も不十分な状況。
    プランに基づいた支援ができておらず、若手の営農インストラクターに対して上司のサポートや先輩インストラクターからのアドバイスも十分に行われていなかった。
    「かつては『3ヵ月前に相談を受けた件、結局どうなった?』など、数ヵ月前に受けた相談内容を業務日誌の束をひっくり返して確認するようなこともありました。生産農家からの相談や回答が各担当の頭の中だけにある状態だったのです」(小野氏)
  3. JA横浜の職員の意識・技術の向上
    先の課題は、営農インストラクター個人の資質・能力に依存する属人的な対応だ。そのため、生産農家に対して誰が相談を受け、回答や指導するのかは決まっていても特に難易度の高い相談事項については、解決スキルの高い職員に業務が集中してしまう傾向がある。その結果、営農インストラクターの組織力、職員全体の意識や技術の向上につながらない面があった。
    「特定の生産品に関する指導、生産農家の承継・相続、農業経営の拡大や縮小、融資などの金融、農地の転用などあらゆる面について、その分野に詳しい職員に任せてしまうと、長期的に見れば、人材育成に結びつかないのです」(小野氏)

JA横浜は、これらの課題を解決するために『戦略営農Navi』の導入に踏み切った。

『農レッジマネジメントシステム』で「出向く活動」を重視

JA横浜では『戦略営農Navi』を『農レッジマネジメントシステム』という独自の名称で運用している。その導入のキーポイントは生産農家などに「出向く活動」の強化に力点を置いたことだ。

まず、営農インストラクターが効果的・効率的に生産農家のもとに出向くためには、JA横浜の農家データベースとも言える「農家台帳」をきちんと整備しておくことが欠かせない。JA横浜では、営農インストラクターの実働を指揮・管理する担い手課の浪岡課長を中心に、営農インストラクター同士が協力しあって農家台帳を整備している。

その農家台帳をもとにして、営農インストラクターが各自の担当先を訪問することで農家台帳のデータを蓄積・更新していく。と、同時に、蓄積・更新された農家データを、営農インストラクターに加え販売部など関連部署と共有し、部門横断的に情報のやり取り、コミュニケーションが円滑に進むよう取り組んでいる。その結果、各自がそれぞれの生産農家の現状を逐一把握することができ、生産農家への対応の平準化につながっている。

こうした農家台帳をもとに訪問活動を進めると、他の生産農家でうまくいった事例を紹介するなど有効に活用でき、より充実した訪問活動ができるようになった。これらの情報をめぐる好循環が、「出向く活動」をより有意義なものにしている。この農家台帳を今後いかに最新の情報にスムーズに置き換えることができるかが大きな課題となっている。

『戦略営農Navi』の導入による効果

『農レッジマネジメントシステム』を導入してから約1年半、さまざまな効果が生まれている。

まず、情報の一元化と可視化が実現できたことだ。生産農家の所在地や氏名、連絡先、作付面積、生産品などの基礎データとともに、現在、誰が営農し、次の代にどう継承していくかを含めた担い手情報のほか、年次、月次、場合によっては日次にも展開し得る生産情報や出荷情報などが一元化できる。これらの情報入力・更新はExcelをもとにしているため、多用途に活用でき、メンテナンスも容易に行える。

次に、蓄積された情報は営農インストラクターの業務日誌にも紐付く「担い手情報」として一覧表示ができるため、情報の可視化につながり、時系列表示することで過去の振り返りも容易になった。

これらの蓄積された情報は、検索機能を活用することで瞬時に必要な情報にアクセスすることも可能だ。

さらにJA横浜では5年毎に実施している「営農実態調査」の情報を本システムと紐付ける予定である。

タブレット端末で生産農家(訪問先)での情報照会にも活用

担い手課 浪岡課長

各情報は、営農インストラクター間はもちろん、営農部・横浜農業総合対策室・販売部などの支店・拠点間でも共有可能だ。JA横浜では、徐々にではあるが組合内の部門間や拠点間の情報共有により、他の関連事業との事業マッチングでの活用も進んでいる。ゆくゆくはJA横浜内の金融、融資や共済などの部門との連携にも進展させたいとしている。

たとえば、ある生産農家が新規の産品を生産したいとすれば、共有している情報をもとに担当の営農インストラクターが生産指導を行いつつ、販売部では最適な販路開拓に取り組み、営農部が土壌改良等を支援するほか融資面の支援を行うこともできると考えています。

JA横浜では、農業後継者問題も含めた担い手の育成支援にも取り組んでいる。「過去の事例も参考に、適切なタイミングで、研修会の実施など適切な情報提供を心がけています」と営農部担い手課課長の浪岡渉氏は語る。

特に、生産農家ごとに過去の情報をさかのぼって画面表示できることは、営農インストラクターの訪問時にも有益と考えている。生産農家を訪問したときタブレット端末で『農レッジマネジメントシステム』を見せながら営農支援・指導方法を話し合うことができる。

補助金や農薬・肥料の案内など、営農相談も掲示板機能により営農インストラクター間で共有しているので迅速な回答が可能になった。身近な相談がいつでもでき、すぐに回答が得られると生産農家にも好評だ。

業務の効率化・省力化に直結

『農レッジマネジメントシステム』の導入による取り組みは、JA横浜において業務の効率化・省力化に直結している。

まず、紙による台帳管理の手間を大幅に削減でき、さらに引き継ぎ・承継などの組織的な技術・スキルの蓄積に役立っている。もちろんタブレットの活用によって生産農家への情報提供も効率化できた。

次に、営農インストラクターが日々の業務日誌を蓄積しているので、業務負荷の状況がわかり、業務が平準化された。組織としては人事異動があった場合の負担が軽減され、適切な人員配置、業務改善が可能となる。それは営農インストラクターがより重要な業務に集中することができ、自分自身の能力・経験等に応じて専門性を高めることにもつながる。

「営農インストラクターは年代層も幅広く、正直なところITに得手・不得手があるのも事実です。『農レッジマネジメントシステム』の運用を始めて日が浅いのですが、この点は早急に対応していきます」(浪岡氏)

JA横浜では毎月営農インストラクター会議を開催し、より利用しやすい『農レッジマネジメントシステム』の運用方法について検討を重ねている。また、営農インストラクターの活動状況と実績管理に基づきランキングづけを行い、勤務評価にも反映させている。こうした営農支援・指導活動と評価が連動することにより職員の能力アップをめざしている。

『戦略営農Navi』に今後の期待

「JA横浜の営農支援・指導は『横浜型農業』として、他の地域の都市農協において注目を集めています。その横浜型農業を発展進化させるために『農レッジマネジメントシステム』は今後とも大いに役立ってくれると思います」と小野部長・浪岡課長は口を揃えて語る。

※この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています
Company Data
設立2003年4月
本店所在地神奈川県横浜市旭区二俣川1-6-21
ご担当部署営農部担い手課(神奈川県横浜市泉区中田西1-12-10)
ご連絡先045-805-6612
正職員数1,368名
組合員数正組合員:11,469名、准組合員:58,938名(合計:70,407名)
Webサイトhttps://ja-yokohama.or.jp
※2021年3月末時点