Introduction Data

導入年月2023年2月
利用ユーザ数357名(職員157名、学生200名)
導入形態クラウド
導入目的専門学校の教職員・学生に関する諸情報の一元化

学校法人ではなく社会福祉法人立の強みを活かす

教務と校務、“横軸”を通したDX化を推進

『Medicare』の活用で教職員・学生に関する情報を一元化、「働き方改革」に貢献

「実践力」を持った福祉人材を育成する

 岐阜県西部の揖斐郡池田町にあるサンビレッジ国際医療福祉専門学校は、社会福祉法人立の専門学校です。社会福祉法人新生会が1976年に設立した特別養護老人ホーム「サンビレッジ新生苑」が、人間の「自立と尊厳」を基本とした医療・福祉の現場をつくり、1996年に開校しました。

 「多くの専門学校は学校法人が経営されていますが、当校は社会福祉法人立の専門学校。もともと特別養護老人ホームやディサービスなどを運営していた新生会という社会福祉法人が、『現場で活躍できる人材・資格者を確保したい』『現場があってこそ生きた教育ができる』という考えのもと設立しました。一言でいうと『実践力』を持った人材を育成する専門学校です。病気や疾患だけでなく、介護・リハビリ利用者の人間性や人生まで幅広くおもんぱかることのできる人材を育成するという思いがあります」(サンビレッジ国際医療福祉専門学校総学科長・作業療法士、廣瀬武氏)

 以後、一貫して「地域で即戦力となる医療・福祉のプロフェッショナルを育てる」ことを目的とし、学生には「からだ」や「こころ」に課題を抱えている方々にしっかりと寄り添える高度な専門的知識や技術を提供してきました。まさに同校は福祉のプロとなるための、「またとない道場」ということができます。

「実践力を持った人材を育成する社会福祉法人立の専門学校」と
同校の設立経緯を語る廣瀬武氏

介護福祉学科、作業療法学科、言語聴覚学科の3科で資格者を育成

「コロナ禍では大変でしたが、教員は毎週、
介護の現場での臨床を継続しました」と語る森和歌子氏

 サンビレッジ国際医療福祉専門学校は現在、介護福祉士を育成する介護福祉学科、作業療法士を育成する作業療法学科、言語聴覚士を育成する言語聴覚学科と、いずれも介護・リハビリに関する専門資格の取得に直結した3学科で編成されています。「設立当初は介護福祉学科のみでしたが、その後、作業療法学科、言語聴覚学科と拡充してきました。なお、一般に知られる看護学科と理学療法学科がないのは、設立当初から病気・疾病よりむしろ『生活を支える資格を取得できる専門学校』を志向していたからです」(廣瀬氏)

 入学者は高校を卒業して進学することが多く、一度、社会を経験して入学する人も2割ほどいるとのこと。岐阜市近郊だけでなく東海3県、北陸・甲信越エリアからも受験者がいます。また、3年前から海外からの留学生も受け入れ、特にアジア圏の留学生が多いようです。

 社会福祉法人立の専門学校だけあって、特色としては授業の一環としての実習だけでなく、現場を通じた授業も行っていることです。同校言語聴覚学科教務主任・言語聴覚士、森和歌子氏は、「言語聴覚学科の教員は、週に1回法人グループ施設に出向き、失語症や構音障害などコミュニケーションに困難さがある方のリハビリを行なっています。そこで1人の臨床家として得た経験を日々の授業に活かしています。また、授業の際にZOOMで教室と繋ぎ、学生が実際にコミュニケーションを取る演習を行わせていただいたり、教員の臨床場面を見学させていただく機会もありました」と語ります。

 この2〜3年は新型コロナ感染症の影響もあり、授業の継続には腐心したようです。 「それでも、コロナ禍では他校に先んじて2020年4月に教員がまずzoom研修をしっかり受け、4月末にはZOOMで授業を開始し、同年6月には対面授業を再開しました。『授業をとめない』ことを心がけていました。ただ、校内での授業は感染予防対策をしっかり施して再開しましたが、介護・リハビリの現場での実習、外部施設の協力を仰ぐとなるとむずかしい面もあり、苦心しました」

 外部施設での実習については、新生会内の法人に振り替えて行うことも認められていたので、同法人内の施設でやりくりしたこともありました。

DXによる「医療福祉教育イノベーション」を実践

 サンビレッジ国際医療福祉専門学校では、2022年度からDXによる医療福祉教育のイノベーションを推進しています。DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術を浸透させ、人々の生活をよりよいものへと変革すること。 医療福祉教育の分野にDXを導入し、学校と学生、さらに医療福祉の分野に技術革新をもたらしていく試みです。
 「コロナ禍がなかったら、DX推進のきっかけをつかむことはできなかったと思います。介護やリハビリの養成校は全国にありますが、コロナ禍ではほとんどがペーパー重視の校内学習に切り替えました。でも、私たちは実習の意義を重視して、どのように継続できるかを考え、DXに行き着いたのです」(廣瀬氏)

 実際には、まず臨床の現場や介護・リハビリ施設の利用者と資格者が交わすコミュニケーションの動画などを録ってきて、その動画をもとに授業を進めてきたとのこと。その延長線上に「より学生がわかりやすく身近に感じられる授業を」と考え、本格的なDXに進みました。

 サンビレッジ国際医療福祉専門学校におけるDX化した業務の全体像は、同校の母体となった社会福祉法人新生会、すなわちサンビレッジ新生苑などの現場と学校が連動したものです。

 学校側では『School Gear』という株式会社プランナーズランドが提供する教務支援システムを導入し、カリキュラム、時間割、出席・通学管理のDX化を実現。また、併せて『Medicare』という株式会社インフォファームの訪問介護・看護事業所向けパッケージソフトを学生教育支援システムとしてカスタマイズ導入し、入試結果と入学後の学生に観察される特徴の関連づけを行い、その分析を通して学生個人に照準を合わせた最適な学びを可視化し、学校側として育成の最適化を図りました。

 授業に関しては、電子黒板や解剖学アプリ(医療系学校向けの学習支援アプリ)などの3D教材を積極的に活用しています。授業の際は、介護やリハビリの現場と連動し、現場ではスマートグラスを活用して教員が行う介護やリハビリの様子を解説するとともに撮映し、学校では電子黒板に現場の動画と音声をリアルタイムで投射、その場で即時に実践授業を行うというしくみです。

 もちろん、必要な座学講義は継続して行なっています。こうした校務、教務、介護現場を通じたDX化により、アナログとデジタルを組み合わせたハイブリッドな実践的教育を実現しています。

 具体的なDXツールは、まず『School Gear』や『Medicare』というアプリケーション・システム。教育コンテンツとしては、一体型電子黒板『xSync Board(バイシンクボード)』、同校も加わって共同開発した『解剖学アプリ』をはじめとした3D教材、スマートグラスというウェラブルデバイスです。
「私たちはITの専門家ではないので、実際には、IT企業が出店するイベントを視察したり、VR(Virtual Reality、バーチャル・リアリティ)を体験したりしてアイデアを得たのが出発点です。そのうえで個別のIT企業と相談し、導入ツールの内容を詰めていきました」(廣瀬氏)

多岐にわたる業務を分解してDX化に対応


 サンビレッジ国際医療福祉専門学校の取り組みでは、このDX化に際して、まず事務業務を細分化しました。

 詳細は割愛しますが、教育に関する「教務事務」は、外部に依頼する場合は講義と実習に分けて各種の事務手続きがあります。そのうえで年間・月間の時間割の作成などがあります。また、外部・内部講師いずれの場合も、実際の授業実施に関わる準備のほか、実施簿、出欠席及び試験・成績管理などの事務があります。
そのうえで、奨学金・奨励金・授業料減免、留学生の入管手続きなどを含めた学生管理事務があります。

 一方の校務事務はいわゆる学校の事務局が行う事務です。まず、毎年の学生募集事務があり、募集要項の作成から資料の請求対応、高校巡回、オープンキャンパスやガイダンスの参加者からの感想や意見を踏まえての広報情報分析、さらに入試に関わるデータ管理を含めた諸事務があります。
そのほか厚生労働省・文部科学省などへの各種申請・報告事務、学費関係の事務、学生や教職員を含めた出勤・健康管理事務、アルバイト・就職関係の事務および卒業と卒業生管理の事務が控えています。

 「これら一つひとつの事務のDX化を考え、最も必要性・効果が高く、当校の方針に合致したものから導入しました」(廣瀬氏)

医療の電子カルテを教育分野に活かす

 サンビレッジ国際医療福祉専門学校では、教務・校務全般にわたるDX化について、『Medicare』を提供するインフォファームと詰めていきました。その過程で挙がったのが「電子カルテ」の応用でした。病院では患者のカルテを電子化する「電子カルテ」の導入が進んでいますが、学校でも同じように情報の一元化を進めていくことを考えたのです。

 「確かに、電子カルテの仕組みは、たとえば利用者の検温結果や利用者が通院する病院の医師による脳画像を介護・リハビリの現場でも活かすことができ、便利であることはわかりました。それをどう教育現場に活かしていくかと考え、『学生のカルテ』があってもいいのでは?と考えました。これが発端です。これまで紙ベースでいうと、学生の成績はある金庫に保管し、学生が受ける奨学金情報は別の金庫に、とそれぞれ別に保管していたわけです。さらに、学生の日々の健康状態なども紙ベースで行なっていました。そのため学生の成績を検討する時に、どんな生活を送っているか、健康かどうか、そのなかで資格取得に向けた日々の勉強が進んでいるかなどの情報を一元管理できていなかったのです」(廣瀬氏)

 こうした個別の情報に“横串”を差して一元管理したのが『Medicare』でした。

 『Medicare』について、新生メディカルという訪問・通所介護や介護予防福祉用具貸与・販売等を行う会社がすでに導入しており、訪問介護ヘルパーが活用していました。この仕組みを学生のカルテにも導入できないか、と考えたのです。
「訪問介護における利用者が学生にあたると考えると、しっくりときます。用途の違いで細かなシステムを変更すべきところはカスタマイズしてもらいました」(廣瀬氏)

 『Medicare』を導入する学生と教員のメリットは、まず、タブレット上で出欠や講義の進捗、質問など日々発生する様々な情報の交換や管理ができるので、授業の準備段階から、互いの情報交換や対話の時間が増えたことです。
「DXで大切な効果は、『時間を生む』ということ。DXによる働き方改革も、時間の創出に目的があります。AIやシステムができることはそれらに任せ、人は人にしかできないことをやっていくことが大切です」(廣瀬氏)

 『Medicare』の活用にあたっては、インフォファームが開発した『カメレオンコード』を1人ひとりの学生証に貼り、そのコードで出欠を管理しています。もちろん、教職員や外部講師も同じです。

 現在、教務について充実させつつある『School Gear』も、基本の考え方や対応は『Medicare』と同じ。学生に関するさまざまな情報のやりとりを、入学から卒業まで通して一元化していきます。
「これまで散在していた情報を一元化することにより、手間が省け、本当に時間効率が高まりました。岐阜県、特に岐阜市内の高卒人材は、進学や就職も、どちらかというと名古屋に目が向いていた。その気持ちはわかりますが、その人材流出に歯止めをかけるべく、岐阜県内・岐阜市周辺にも面白い会社、教育機関、施設等がたくさんあるとわかってもらえるようにしたい。単に当校に限った話ではなく、岐阜県全体の人材活性化も視野に入れて取り組んでいます」(廣瀬氏)

出欠管理から単位習得の証明、教員の業務日誌など、
各種情報に優先順位をつけて『Medicare』の活用に
取り組んでいきたい」と語る湯川朗子氏

DX化が生み出す新たな授業形態

 事務業務を教務と校務に分け細分化し、数百に上る事務の1つひとつについて関連性を踏まえつつ優先順位をつけてDX化してきたサンビレッジ国際医療福祉専門学校。めざすのは「質の高い教育」です。その点では3年前から研究授業を行なっています。教員が他の教員の授業を見学しあい、ベンチマークしていく。その相互交流を通じて、より質の高い授業が編み出されていきます。
「一人の教員の力が優れているのではなく、組織力として教員の質が高まっていく」と廣瀬氏は語ります。

 DXは手段であって目的ではありません。同校ではDXを導入して創出した時間を教育の活性化に結びつけています。
「質の高い教育が実現でき、学生に『ここに学びにきて本当によかった』と評価してもらえる専門学校にしていきたい。チーム、学校全体で情報を共有しながら発展進化していく。職員一同同じ気持ちで応援し、当校で資格を取得した卒業生、資格者がより社会に貢献していくことを期待しています」

 と、今後の抱負を語ってくれました。

  Company Data

開校1996年4月
所在地岐阜県揖斐郡池田町白鳥104番地
職員数614名(社会福祉法人新生会。令和4年7月1日現在)
事業所社会福祉法人新生会が母体となり、サンビレッジ新生苑、サンビレッジ国際医療福祉専門学校、
株式会社新生メディカル、NPO法人・校舎のない学校などをグループとする
事業内容社会福祉法人新生会としては、
サンビレッジ新生苑をはじめとする特別養護老人ホームのほかディサービス、ショートステイ、
通所介護等の各種看護・介護事業、また専門学校等を展開。
サンビレッジ国際医療福祉専門学校としては、介護福祉学科、作業療法学科、言語聴覚学科を擁する。
Webサイトhttp://sunvi-college.jp

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