膨大な顧客情報の管理に『戦略箱』を活用

株式会社ピーエーエス 様

Introduction Data
導入年月2024年10月
利用ユーザ数26名
導入形態クラウド
導入目的業務効率化の促進
案件管理の改善
経営者の業務負担軽減
  1. 顧客数が増加し、業務内容の多様化に対応する必要性が高まった
  2. 業務プロセスを可視化し、ナレッジの共有と社員がイキイキと働ける効率化を実現
  3. 最初から全機能を使うのではなく、着実に利用機能を広げていく

障害の有無に関わらない快適な暮らしを支援するP.A.S.

同社製品『P-Start』と『p!nto』

株式会社ピーエーエス(以下、P.A.S.)はオーダーメイドの車椅子および姿勢保持装置の製造・販売を行うほか、特殊マットや体位変換器などの福祉用日常生活用具の企画開発、さらにクッションからチェア・寝具・フィットネスまで一般向けのプロダクト(商品)を製造し、百貨店や通販サイトなどを通じて販売しています

P.A.S.の正社員は2025年4月末時点で27名。パートタイマーを含めると40名近い従業員が働いています。パートタイマーも各部署が担う仕事の補助ではなく、製造や縫製などの現場で正社員と同様に重要な役割を担うほか、事務を担当する人もいます。

P.A.S.の業務はオーダーメイドの車椅子を製造するほか上記のように一般商材もあり、パートの中にはそのアッセンブル(組み立て)などを行っているスタッフもいます。代表取締役である野村寿子さんは作業療法士という資格を持つ専門職で、26年前の1999年、共同代表である村口健一さんとP.A.S.を創業しました。

創業のきっかけを野村寿子さんはこう語ります。

「作業療法士として、『障害の有無によって線を引きたくない』という思いが強く、その思いに村口が共鳴してくれたからです。『線を引きたくない』とは、障害の有無にかかわらず快適な暮らしを求めるのは万人に共通した思い・要望であり、その思いを実現するために作業療法士の専門性を生かす仕事をしていきたいということです」

そんなP.A.S.が『戦略箱ADVANCED』をどう導入・活用し、現在どのような要望・期待を持っているかを見ていきましょう。

顧客数が増えるとともに、業務内容も多種多様に

社内の様子

実際の部署は、お客さまの要望に適うオーダーメイドの車椅子を製造・販売する1課と、『p!nto』『X-BALANCE』をはじめとする一般商材(現在約40アイテム)を製造・販売する2課に分かれています。販売先として、1課は福祉事業者とその事業者を通じた障害者であるお客さま、2課は障害のある方はもちろん、子どもから高齢者までの一般消費者です。

1課で車椅子をオーダーメイドでつくる際は、医師の処方箋のもとに製造します。その面では障害に関して診察・治療・リハビリなどを行う施設や支援学校の医師やセラピスト、教師、在宅介護の場合は在宅診療をされる事業所様も入り口の顧客様となります。そしてもちろん、実際に車椅子を使う障害者がご購入者様です。

なお、車椅子の製造販売に関しては市区町村や都道府県などから補助金が出ることが多いので、その自治体が実際に料金をお支払いいただく顧客様でもあるわけです。

一方、2課についてはテレビショッピングや通販雑誌、日用雑貨店や百貨店、家具店に販売するほか、P.A.S.プラスという関連会社を通じて通販サイトなどでの取り扱いもあります。2課の主要な取引先は30社ほど、1課の顧客も含めると全体の顧客数は4,600ほどにもなります。

この顧客数が膨大になってきたこと、さらに会社としてリハビリテーションに関する研修、セミナーの企画立案と実施、行事・催事の企画、運営、他社行事・催事への出展など事業が広範囲になってきたことが『戦略箱ADVANCED』の導入に至った直接の理由でした。

業務効率化、案件管理の改善、経営者の業務負担軽減をめざして

『戦略箱ADVANCED』の導入目的を列挙すると、次のようになります。

⑴ 業務効率化の促進

従来の手作業による業務を減らし、案件ごとのプロセス(工程)を標準化することで、生産性を向上させる

⑵ 案件管理の改善

顧客や案件に関する情報を一元管理することで、情報への迅速なアクセスと共有を可能にする

⑶ 経営者の業務負担軽減

従来行っていた経営者の事務作業・集計作業を、標準化・一元管理によって軽減する

「端的にいうと、『戦略箱ADVANCED』導入のきっかけは、『一人ひとりの社員の仕事が現在どのプロセスにあるのかを社員全員で共有できれば、より的確に仕事が進む』と考えたからです。膨大な顧客情報も共有化できれば、その顧客に対応した社員の現状の業務把握も確実にできます。また、退職者が発生したときの引き継ぎもスムーズに行えます。さらに、一つの仕事に対する人員の適正配置も可能になると考えました」(野村さん)

通常、製造現場は生産管理を適切に行っていけば、正確に仕事を進めることが可能です。しかし、弊社の製造の業務は営業の仕事と密接に関連していて、日々の商談での仕様変更などもあり、独特ののむずかしさがあります。そのため、『戦略箱ADVANCED』のユーザー数は当初は主に営業が利用すると考え15名でしたが、現在は、全正社員での利用になっています。

約3カ月の導入期間を経て、本格的に稼働

P.A.S.では各部署からメンバーを選出しプロジェクトチームを立ち上げ、各利用機能について検討を進めました。 2024年7月31日(水)にキックオフ会議を行い、8月に3回、毎回2時間ほどの導入検討会を実施しました。 9月にはレビューを実施し、10月から運用を開始するスケジュールで進めました。

各検討会ではインフォファームのサポートエンジニアが参加し、操作・利用方法などを細かく伝えながら説明し、また疑問点があれば対応していきました。そして9月中旬から下旬にかけて初期データを準備・取り込み、クラウド環境を整備したうえで10月の稼働を迎えました。

導入にあたっては、目標をどこに置くのかも重要なポイントです。P.A.S.ではまず、端的に「業務プロセスの可視化」を目標に据えました。業務プロセスを標準化しデジタル化すれば、「どの社員が、どの仕事を、どの段階まで進めているか」が明確になり、適切な指示・アドバイスができるようになります。もともと手作業や紙ベースで行っていた業務をデジタル化することで、効率的に業務を進められるようにもなります。

「情報検索の効率化」も大きな目標です。デジタル化によって顧客や案件に関する情報を素早く検索できれば、日常業務の効率化につながります。また、社員の異動などに伴う引継ぎの円滑化も大きな目標でした。退職や部署の異動は頻繁にはないとしても案件ごとに仕事のやり方が異なるケースは多く、その案件で蓄積されるナレッジを共有できると、業務の引継ぎをスムーズに行える体制を構築することもできると考えたのです。

着実に利用管理機能を拡充していきたい

管理画面例

本格的に稼働した際は次の機能利用まで想定しています。

・顧客管理(企業情報、人情報)

・活動管理(スケジュール、日報)

・案件管理(案件、案件・製造工程プロセス)

・商品管理(商品、保有商品)

導入後約半年強の2025年5月時点では、まだまだすべての機能を十全に使いこなしているわけではありません。現時点では、それぞれの機能に従来の紙による情報データを移し替え、更新しつつ利用しているのが実情です。習ってすべてを理解してから稼働するというより、徐々に慣れていくことで、より手軽に効率的に利用が促進されていくことを狙っています。

この段階でも、次のような効果が上がっていると野村さんは語ります。

「継続的な取引先もある一方、お客さまの口コミやS N Sを通じて新たなお客さまとの取引が始まるケースも多くなっていて、注文に製造が追いつかなかったり、一人の営業担当の仕掛かりの仕事が増えたり錯綜したりすることもままあり、“アップアップ”の状態になってくるのです。繁忙期になると、『大変だから辞めたい』という社員の声もありました。仕事・お客さまに対する思いは共有できていても、実際の仕事の進捗状況が共有できていないと、『この仕事は続けられない』と社員が考えても無理からぬこと。その点、『戦略箱ADVANCED』の利用によって個々の営業担当の仕事の平準化が少しずつですができるようになってきました」

代表取締役 野村寿子氏

また、『戦略箱ADVANCED』の導入前は紙による顧客ファイルが膨大になっていたのですが、徐々に机の上が上いっぱいになることが改善されてきています。営業担当によって記述のしかたが異なり、内容に濃淡もあるたため、「どの案件・仕事がどこまで進んでいるか、お客さまとどんな商談を進めているか」などがわかりづらいという解決課題に関しては、まだ現場で戦略箱に工程を入力するという作業に慣れていなくて達成できていていませんが、次の繁忙期になる前にもう一度学習会を開いてできるようになろうと思っています。

使用し始めて半年経って、まだ十分ではありませんが、こうすれば良いな、ということは見えてきた気がします。営業担当や管理者は出社すると、まず『戦略箱ADVANCED』を立ち上げて行動管理画面をチェックする。どの仕事がどのように進んでいるか、問題になっていることはないかなどが一目でわかり、それらの情報を共有できます。必要に応じて、会議・商談の日程や連絡事項などを書き入れたり上司が確認したり、参加・同行を依頼したりすることが理想です。

商談などに伴う情報の更新は、商談が終わったあとその場で書くようにするという習慣をつけるために、 音声入力も活用して効率化・標準化を進めようと思います。「本来なら各種の利用機能を駆使し、経営的な分析や個々の営業担当の業務分析をしたいのですが、それはこれからの課題です。」(野村さん)

ここ数年でS N Sが急速に浸透し、社員が自前のアプリを使ってスケジュール管理するようにもなってきました。ところが社員がそれらS N Sを自由に仕事に使うと、結局、情報が一元管理できなくなります。そこで日々の仕事の情報は『戦略箱ADVANCED』で管理し共有することしたいと思っています。

情報の共有をすることで、他の人の空き時間を考えつつ協働できるように依頼することもできるように戦略箱ADVANCEを使いこなせるようにならなることも課題です。

自社なりのカスタマイズが欠かせない

製造現場の様子

『戦略箱ADVANCED』では、営業先で採型や仮合わせ、納品時の写真など画像も取り込めます。また、自治体から受領する補装具費支給券なども紐づけて管理できます。日々更新する取引履歴も詳細に確認できるので、手間のかかる進捗状況などの確認作業、スケジュール・段取りの設定や手配などがスムーズに進みます。さらに、エンドユーザーとお客さまをつなぐ情報として病医院や、障害・介護施設名などの情報も紐づけられるようになっています。

将来像としてこの『戦略箱ADVANCED』を業務掲示板・ホワイトボードのようにいろいろと書き込み、さらに内容に応じて自動分類・整理できるようになれば、より利便性の高いツールとなります。

「道半ばではありますが、わかりやすい効果としては紙のデータが減り、検索機能により確認のスピードが格段に上がりました。オーダーメイドで一定の期間を要して車椅子をつくるという職人風の“人に依存した仕事”では、工程を確認し、段取りを決めていくのに意外と手間取ります。職人仕事に集中するわけでもなく、工業製品でもあり、工場現場と営業部門の連携が重要です。注文が重なると、書面上の納期、エンドユーザーが実際に使えるようになる“納期”、物流に必要な搬入期限の“納期”など、複数の“納期”に応じて順番を決めつつ仕事を回していかないとやっていけません。それらを一括して『戦略箱ADVANCED』でデータ管理・共有化することができれば、無理なく無駄なく工程管理ができます」(野村さん)

特にプロモーション企画から採型・現場作業までこなす野村さんにとっては、自分自身の業務効率化を図ることができるのではないかと期待しています。

「最近では大阪万博での新しいリラクゼーションシステムの出展のほか、他県の宿泊施設建設、建築中の新しい社屋での製品展開など10を超えるプロジェクトを同時並行していて、頭では整理できず、紙では検索できず、自社の事情に合うように一定のカスタマイズができる管理アプリが欠かせません。その点も『戦略箱ADVANCED』に期待しています」と語ってくれました。今後、工程のステータスを色分けして管理・共有するなど、“パッと見”でわかる表示ができるようにしたいと考えているとのことです。

細部まで情報を共有することは重要ですが、細かすぎると記入も見るのも面倒になってしまいます。

とても素朴な考え方ですが、今後本当に必要な情報の共有を厳選していくことも重要とお考えです。その共通理解ができて初めて、「社員がイキイキと働ける効率化」が実現します。

※この記事は、2025年4月時点の情報を元に作成しています