利用者の生の声を反映した、活用しやすい台帳システムに拡張

さがみ農業協同組合 様

Introduction Data
導入年月2023年4月
利用ユーザ数186ユーザ
導入形態クラウド
導入目的 ・旧システムから、より活用しやすいシステムへの変更
・圃場管理・操作ログ追跡など、現在の利用に即したシステム対応
・組合員との情報交流を通じた絆の強化
  1. 農業DX化の観点から、クラウドとオンプレの差について検討したい。
  2. 適切な労務管理や活動状況の把握に役立てたい。
  3. 人事異動があった際の情報の引き継ぎをスムーズに行いたい。

年間新規就農者は20名を数え、今後の営農活動に期待

組織経済部指導販売課 青木課長

平成7年に6町1市のJAが合併し、平成17年に海老名市が加わり、現在は神奈川県藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町・綾瀬市・大和市・鎌倉市・座間市・海老名市の7市1町の合併農協であるJAさがみ。その組合員である生産農家は、主にトマト、きゅうり、キャベツをはじめとした野菜や果樹、穀類、花卉、植木などを生産・栽培しています。水稲(お米)は全体にわたって広く生産され、花卉は寒川町が主要な生産地。また、組合員には畜産事業者もいます。
生産物は農協から主に県内5市場に出荷されるほか、直営直売所も8店舗あります。
組合員数は令和5年2月末日現在、正組合員数が9,923名、准組合員数が56,540名の計66,463名となっています。

「神奈川県内で見ると、他のJAと比較し、市場性として大きく変わるところはありません。生産農家も一部に3,000坪を超える大規模農家がありますが、中小規模の農家もたくさんあります。」(JAさがみ組織経済部指導販売課 青木隆課長)。
なお、「農家の高齢化、継ぎ手・担い手不足の事情も他のJAと同様のものがあり、今後の課題となっています。その中でJAさがみとしては、2023年の新規就農者が20名を数えました。今後の営農活動に期待を寄せています。」と青木氏は語ります。

都市近郊農家の現状を踏まえた「みどりの仲間プラン」を推進

JAさがみでは首都圏近郊のいわゆる都市近郊農家が多い現状を踏まえ、平成9年度から都市農業振興戦略「みどりの仲間プラン」を策定し、令和5年度は第6次の3カ年計画の2年目を迎えています。
「みどりの仲間プラン」とは、JAさがみの組合員を、

・ばりばりスタイル…農業主業型

・わいわいスタイル…農業・消費者交流型

・こつこつスタイル…資産活用型

の3タイプに分け、そのタイプごとに特徴的な課題を解決するとともに、タイプごとの特性を活かした施策を実施していく戦略です。みどりの仲間プランでは、「農業者の所得の増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を3タイプ共通の基本目標として掲げ、継続して事業に取り組んでいます。

農業を取り巻く環境は常に変化していますが、「現在の共通した課題は、輸出依存の高い肥料や飼料、燃料といった生産資材の価格の高騰が続き、農業経営を圧迫していることです」と青木氏は語ります。この課題に対してJAさがみでは、都市近郊農家のアドバンテージを活かし、管内の直営直売所だけでなく、管内量販店の地場野菜コーナーへの直納販売の拡大をはじめ、共販出荷物の市場流通においても出荷日の翌日には出荷物が店頭に並ぶ取り組みを行っています。「消費地に近い特性を活かし、都市近郊農業の持続的発展に努めていくことが大事です。」と、青木氏は力説しました。

旧台帳システムの保守契約期限をきっかけに『戦略営農Navi』を検討

組織経済部指導販売課 宮治氏

このような環境下、JAさがみでは平成28年度より他社製のデジタル版営農台帳システムを導入していました。その台帳には圃場や作付け、販売・購買や職員の日報といった項目があり、営農指導事業に活用していました。
ところが令和4年度、この旧台帳システムが保守契約期限を迎え、このシステムを更新して使い続けるか、新しいシステムに切り替えるかの決断を迫られました。
「その折、かねてからシステムの切り替え導入を提案いただいていたインフォファームの『戦略営農Navi』と、旧台帳システムの2つに絞って検討することになったのです。検討では費用のほか、クラウドとオンプレ(オンプレミス:システムに必要なサーバーやネットワーク関連機器・ソフトウエアなどを自社内で保有し運用する形態)の差などを検討し、農業のDX化をより進める必要があること、近隣のJAでも採用されていたことなどを踏まえて『戦略営農Navi』を採用しました。」(JAさがみ組織経済部指導販売課 宮治直斗氏)

オンプレの場合は初期費用がかさみます。一方クラウドを利用したシステムで月額支払いの場合は、初期費用は抑えることができても長く使い続けるほどにオンプレでの利用を超える負担になる傾向があります。その逆転するのがいつになるか、そのときどう対応するかも検討材料の1つだったとのことです。

「また、通信速度、利用者にとってはクラウドとオンプレのどちらがサクサク動くかというのも大事な判断材料です。確かにオンプレのほうが自前のサーバーなのでサクサクと動きますが、何かトラブルが起こったときの修理費用は機器・ソフトウエアを自前で持つオンプレの方がかかります。結局、『どちらが相対的に比較し使いやすいのか』で判断することになりますが、導入期だけでなく、運用していく中での費用も検討材料の1つでした。」と宮治氏は語ります。旧台帳システムはオンプレであるため、イントラネット(内部ネットワーク)に限りアクセス可能でした。一方『戦略営農Navi』はクラウド仕様なので、どこでも動かしやすい利点があったとのことです。

旧台帳システム利用者の生の声も反映

導入にあたっては、旧台帳システムを使い慣れた職員にとって違和感なく使えるか、さらにより使いやすいものになっているかを重要視しました。その点では、「まず違和感なく使えることに留意しました。導入過程では何度も綿密な打ち合わせ・検証を重ね、特に、旧台帳システムに付加する機能の打ち合わせと検証にはかなり労力と時間を要しました。」と宮治氏は語ります。導入検討メンバーに旧システム台帳の管理者や利用者がいたため、使いやすさや操作性などの実情・実感を踏まえたうえで検討できたことがアドバンテージになりました。

こうした検討を行うことにより、『戦略営農Navi』導入後に利用するユーザもスムーズに使いこなせています。
ちなみに、圃場の管理機能については、JAさがみ側から先行して要望があったというわけではなく、『戦略営農Navi』側の機能として付加するタイミングで機能強化の話し合いがあり、導入を進めたものです。
一方、JAさがみでは、操作ログを実装しています。これについてはJAさがみ側から要望があったものです。操作ログを適切に把握できれば、毎日ログインするユーザの活動状況もわかるようになり、適切な労務管理や活動状況の把握に役立てることもできます。

管理者に依存しすぎないことも課題の1つ

JAさがみでは利用ユーザ数は186ユーザと多いのですが、導入当初、担当部署では、「こういった使い方はできないか」「旧システムの台帳とどう変わっているのか」などユーザからさまざまな声を聞き、その対応に追われたこともあるようです。また、JAさがみでは毎月、前月分の各組合員の購買・販売、農家情報の更新を行っているため、それをどのように効率化していくのかも重要です。
こうした細かな点についても『戦略営農Navi』担当者と綿密に打ち合わせ、ときには突発的にリモートで対応することもありました。現在は毎日管理していたものを毎月1回や変更点があったもののみ確認するなど“都度管理”の方法に切り替えています。

「農機の修理の履歴が残っているので素早く確認できるのも、農機情報の把握の面で有効で、担当者レベルで大きな利点であると考えます。」と宮治氏。加えて、「導入後半年が経過し、まだ操作面では不慣れなこともあり、成果と呼ぶべきものは出ていないかもしれませんが、保守運用に関しては自走的に行えるようになってきています。細かなサポートについては、1つの質問に対して、前後の段階の操作運用の経緯を含めて解決方法を提示してもらえ、『戦略営農Navi』がインフォファームの自前のシステムだということも利点であると感じています。」と評価しています。
こうした細かなサポートも奏功し、ファイルサーバーのデータ更新、農機、圃場、作付けといった各段階の管理も包括的にでき、活用が進んでいます。

人事異動の際に有効性を発揮

「圃場管理機能や操作ログを後から追える機能の実装などの追加機能も含め、『戦略営農Navi』の機能は、現在の現場のユーザに役立つことに加え、人事異動があった際の引き継ぎにも大いに役立ちます。」と宮治氏は語ります。「それぞれの営農指導員・組合員と『何について、どこまで話し合っていたのか、何が課題になっているのか、どのような販路、資材を求めているのか』などについて細かなところまで分かり、引き継ぐことができるからです。」と青木氏は、その理由を教えてくれました。

特にJAさがみのように合併を経験したJAでは、ユーザ各自が馴染みのない地域に異動になることもあるので、圃場、生産農家データの引き継ぎに関するメリットをより感じているとのことです。
蓄積されたデータを有効に活用すれば、これまでは多分に感覚的に理解していたこと、口頭による報告や連絡も、デジタルデータとして履歴を踏まえつつ正確に把握できます。すると、引き継ぎ後の進捗状況の確認、農機の修理や設備投資なども含めた“次の打つ手”の提案もスムーズにできます。一言でいうと、後任の担当者にも話が通じやすいのです。

他JAとの“共有力”にも期待

インフォファームの『戦略営農Navi』担当者には現在も、「こういった使い方をしてはどうか」といったアイデアを提案されることも多いようです。「その内容はこれまで複数のJAの導入事例に基づいた提案やアドバイスなので、有意義です。」と回答いただきました。他JAの事例内容はJAさがみとしても役立つことが多く、「今後は他JAと『戦略営農Navi』のより発展的な活用法について話し合う場があってもよいと考えています。」と宮治氏は語ってくれました。

旧システムの台帳はいわばJAさがみ用につくった台帳システム。そのため使いやすいシステムでしたが、今後は自分たちが使いやすいだけでなく、他の人も使いやすいことが求められます。将来的にはデータ連携をスムーズに行える環境をどのように整備するのかも重要な課題です。
その点、他の近隣JAでも使われている『戦略営農Navi』は、農家台帳の総合システムとしてより広範囲で共有できるシステムに進化していくことが期待されます。

Company Data
設立1995年3月
本店所在地神奈川県藤沢市湘南台5-14-10
職員数正職員(パート等除く)981名
組合員数正組合員9,923名、准組合員56,540名(合計66,463名)
ご担当部署組織経済部指導販売課(0466-48-2811)
Webサイトhttps://ja-sagami.or.jp/
※2023年2月時点