営業歴40年が見る営業スタイルの変遷

著者は、入社以来営業一筋で数年前に定年を迎えました。 昭和・平成・令和と営業職をやっていると、変化する営業スタイルに驚かされると同時に、昔の泥臭いやり方を懐かしく思うこともしばしばあります。

昭和後期

昭和(1980年代)、私が営業としてデビューを果たした頃、営業といえば100%フィールドセールスでした。 アポイント無しの飛び込みスタイルがメインで、お客様の元にとにかく通い、ニーズを聞き販売する。いわゆる「御用聞き営業」です。
汗をかき、靴底を減らすことこそ営業のステータスみたいなところもありました。現代ではアポイントが無ければオフィスに入る事もできない企業も多いのですが、当時は超大手企業以外平気で入室できました。

この頃はお客様が製品やサービスの情報を得る手段がほとんど無く、営業からの情報提供がほぼ全てといっても過言ではありませんでした。つまり、アポイントが無くても興味を引くキャッチコピーを話したり見せたりすることができれば、話を聞いてくれて商談に持ち込める確率が高かったと言う事です。もちろん、ノートパソコンやモバイル通信環境もありませんから、現物を持ち込んでのデモンストレーションだったわけですが、その分お客様へのインパクトは大きかったと思います。(そこまでやってくれるのなら御社に決めようか・・・とか)

平成前期~中期

平成(1990~2000年代)になると、インターネットが普及し、買い手も売り手も情報収集をする手段の幅が格段に増えました。
買い手は事前に情報収集(比較)することができるようになり、飛び込みで自社商材を持っていくスタイルでは通用しなくなったのです。

同時に、バブル崩壊によりお客様の懐もシビアになり、営業はいかに他社よりも魅力的な提案をし、効率的に顧客ニーズを把握するかが重要となってきました。 お客様の情報は、営業個人での管理から、データベース化して組織で共有する時代にもなり、SFA(営業支援システム)が登場してきたのもこの時代でした。余談ですが、弊社の『戦略箱』も1998年にWeb版として産声を上げています。

平成後期~令和

現在、特にここ数年、コロナの影響もありWeb商談の普及が一気に広がったのを機に、営業活動における地理的な制約はほとんど無くなりました。 もちろん、商材・サービスによっては対面を必要とするべきものもありますが、商圏が県内から全国へ、又は全国から世界中へ広がったという意味では大きな衝撃を受けました。
また、MAツールやSNS、AIを使ったビッグデータ解析など、マーケティングが販売戦略において必要不可欠なものになってきたのも現代の特徴です。 マーケティング部門と営業部門が連携し、自社の製品を「売り込む」のではなく、お客様の課題を見つけ、課題解決のための最適解を提案することがこれからの営業に求められるものと日々感じています。

変わるものと変わらないもの

このように40年間で大きな変革を遂げた日本の営業スタイルですが、ただひとつ当時と現代で変わらない事があります。
それは"人"です。
どんなツールを使って、どれだけの情報を駆使しても、最終的に購入を決定するのは人の意思です。 決定権者の心に如何に刺さる提案ができるのか、昭和の個人営業の時代では、この部分に大きな能力差がありました。 しかし、現代では様々な技術やツールのおかげで組織営業が確立され、個人よりも組織全体での能力がモノをいう時代になってきました。昔の泥臭い営業スタイルが決して間違いというわけではありません。むしろ、その泥臭さが良いと思う時期もありますし、お客様がそう感じるケースも少なくありません。
その時代の取り巻く環境に合わせて手段・発想を柔軟に変えつつも、"人"という根底にあるものを改めて考えさせられる今日この頃です。